房総エッセイ

令和7年7月7日の郵趣活動

令和7年7月7日の郵趣活動 アート活動

ゾロ目消印をもらいに銀座へ

毎朝親に怒られながらやっとのことで布団から這い出すというのに、遠足や運動会の日だけはさっさと起き出して活動を始める。私はそんな子供だった。今朝は目覚ましが鳴ると同時にパッと目覚め、洗濯機をまわし、庭木に水をやり、朝ご飯を食べる。大切な外出があるからだ。
  
令和7年7月7日。郵趣人において、ゾロ目の日は大抵忙しい。文字並びが良いので何かしら消印が欲しくなるのは当然で、さらに特別な催しが行われるとなれば数ヶ月前からスケジュール調整に勤しみ、当日いそいそと出かける。
今日は日本郵便から新しい切手が発売されるにあたり「初日特印」の押印があることが決まっていた。

初日特印について

初日特印とは新しい切手の発売と合わせて開催される押印サービスだ。大半は発売当日のみの対応なので、貴重性が高く人気がある。
押印場所はいつも決まっており、全国の大型郵便局50箇所ほど。東京では「東京中央」「日本橋」「芝」「上野」「渋谷」「新宿」局で対応してもらえることが多いが、中でも一番混むのは「東京中央」で、理由は押印してもらえる消印の種類が多いからだ。絵柄入りだけを見ても手押しと押印機による2種類があり、ベテラン勢ほどここを選ぶイメージがある。
局名は「東京中央」(東京駅丸の内、KITTEの一階の郵便局)なのだが、押印対応場所は京橋郵便局(東銀座、歌舞伎座の近く)なので、本日目指すのは銀座となる。
東京と銀座の地図
「東京中央」印は「京橋」郵便局で押してもらえる
今日発売の切手は「海のいきものシリーズ 第9集」という特殊切手で、アザラシの絵がなんとも愛らしいのだが、その手押し印の絵柄が仕掛けられた内容だった。絵柄の中にまで「777」と入れられており、発表時から「これは久しぶりの激混みだ」と予想していた人も多かったことだろう。
私は風景印loverなので初日特印を取りにいくことはあまり無いが、この印はぜひ欲しいと思った。仕事の休みを取り、オリジナルのポストカードまで作って、数ヶ月前から楽しみにしていたというわけ。
  
最寄りの高速バス乗り場から東京八重洲行きのバスに乗る。アクアラインからそう遠くないエリアに住んでいるので、高速バスを使えば東京駅までも1時間ちょっと。今日もウトウトしているうちに、さっさと到着してしまった。

京橋郵便局

京橋郵便局入口
京橋郵便局 押印特設会場入口
京橋郵便局での押印は窓口ではなく、特設会場にて行われる。裏の職員用入口から建物に入り、エレベーターか階段で5階に移動。押印開始は9時からで、今回は11時ごろ到着したので最初の激混み状態は終わっていたが、それでも「手押し印希望」は長蛇の列となっていた。
すぐにおなじみの顔ぶれを数人見つける。定期的に出店しているOtegamiフリマの作家仲間やお客様たちだ。「房総から出て来たの~?エライ!」なんて言われるけど、実質バスの中で1時間寝ていただけなので「エヘヘ」と曖昧な返事でごまかす。
  
押印前準備をするためのテーブル列に長身の女性を見つけた。トレードマークの長い三つ編みに確信を得て、後ろから「ボリさん」と声をかける。振り向いた顔にいつものスマイルが浮かび、「おー、遠くからご苦労ご苦労」と労いの言葉をもらった。房総に引っ越しただけでずいぶん褒められるようになってしまった。こういうの役得って言うんだっけ?ちょっと違うか?
  
消しゴムハンコ作家の青雀堂ボリさんはOtegamiフリマ出店作家の一人で、郵趣の大先輩でもある。イベントにしばしば借り出される押印者としての腕も大したもので、彼女からは郵趣の多くを学ばせてもらっている。ボリさんもこの日のために新作ハンコを掘ってポストカードを作っていた。お友達へのお便りにペンを走らせている隣で、私も母親へのハガキを書く。
  
手紙を書く
特設会場には手紙を書く人用のテーブルがたくさん用意されています
「あの可周久さんにそっくりなお母さんね」
「え?似てます??」
「めちゃくちゃ似てるよ、遠目でも親子だって分かるくらい」
  
母は昨年秋に房総へ1週間ほど滞在し、その間に開催されたOtegamiフリマにも足を運んでくれたので、作家仲間には面が割れている。70代半ば、運動嫌いで体力はそれほど無いにも関わらず何故かめちゃくちゃ体が丈夫で、これまで病気らしい病気をしたことがない。草取りが趣味で、実家の庭や畑を整えるのが彼女の日課だ。
あんなふうに歳を取りたいものだと最近よく思う。姿形のみならず、人生後半の過ごし方も近づけていきたい今日このごろ。
  

カピバラ舎さん777押印
カピバラ舎さん777押印
カピバラ舎さん オリジナルポストカード
青雀堂ボリさん オリジナルポストカード
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この日のために用意したポストカードに希望通りの押印をしてもらい、本日のメインイベントは完了! ボリさんや他の友人たちに別れを告げて京橋郵便局を後にした。

有楽町 東京交通会館地下街

一番の目的を果たしたら、お楽しみのランチタイムである。銀座という場所には、ものすごい数の飲食店がひしめいている。値段、量、内容も自由に選ぶことができるが、私が好きなのは有楽町の東京交通会館の地下だ。程よい値段で美味しいものを食べられる店が多く、全体的にあまり混んでいないところも気に入っている。
食欲のアンテナがピン!と反応するお店を探して、幸せな徘徊を開始。暑い日にこそ食べたいもの。さっぱりとしたゆずラーメン、喉越しのよい水沢うどん、沖縄そばも悪くない。
  
地下街を一回りする最終コーナーで、まだ入ったことがない店の前で足が止まる。長崎県平戸の郷土料理とあり、大ぶりの刺身が乗った海鮮丼の写真が魅力的だ。
平戸料理は未知の領域、食欲アンテナも良い感度を示しているので、今日のお昼はここに決定!

島の味処 平戸こんね

「島の味処 平戸こんね」はカウンター10席ほどのお店で、夜は居酒屋を営業されているらしい。ランチタイムは海鮮丼や魚のお茶漬けといった、平戸の魚をメインとした定食が用意されている。最初の訪問なので一番のおすすめ「平戸ぜいたく海鮮丼」を選んだ。隣に座った男性は常連なのだろう、勝手知ったる様子で3種類の醤油をサッサッと醤油皿に注いでいく。私も真似をする。
  
長崎市平戸のさしみ醤油、キッコータとキッコーイワ
長崎県平戸のさしみ醤油
 
その3つの醤油のうち、1つは我が家でも定番のキッコーマン「しぼりたて生しょうゆ」であるが、残りの2つが興味深い。どちらも平戸の醤油醸造所で作られる地元産のようだ。お店に貼られていた説明をそのまま引用する。

【超甘】キッコータ醤油「キッコータ」

平戸市津吉町で生まれた伝統の手作り醤油。自然豊かな風土の中で生まれた「キッコータ」には、醤油本来のコクと香りが息づいています。
【甘い】岩野上醤油醸造場「キッコーイワ」

大正15年創業。平戸市生月町の岩野上醤油醸造所が誇る「さしみ醤油」。まろやかな甘みを持ち魚との相性はバツグンです。

なにそれ…。超魅力的!まずは食前酒よろしく、この2つの醤油をぐいっといきたいところだが、あいにく醤油皿が三連になっているのでそうもいかない。そうもいけたところで、大人としてやるべきことではないけれど。
魚が現れるのをひたすら待ち、かくしてアゴ出汁の味噌汁と一緒に出てきたのがこちら!
  
平戸こんねランチ、平戸ぜいたく海鮮丼
平戸こんねランチ「平戸ぜいたく海鮮丼」
 
一目で「めちゃくちゃ鮮度状態が良い魚」ということが分かり、私の期待値の針は上限を振り切った。心を落ち着けるために、まずは味噌汁を一口。
 
「わー!ウッマー!」
 
出汁の旨みたっぷりで、思わず鼻息が荒くなる。残念ながら心は乱れるばかり。もうガマンできない、魚に行くぞ!
まずはてっぺんにのったヒラマサから。わさびを内側にくるりと巻いて、超甘キッコータに浸す。お米なしで、魚だけでパクリ。
この時の食感について、よく使われる表現は「ぷりぷり」なのだろう。だが、私の感覚に一番近かったのは「シャキッ!バチーン!」だった。決して凍っているわけではない。魚の筋肉の引き締まりがすごいのだ、本当に鮮度が良い。水揚げ、活き締め、すぐ氷付けされた上、地元の食堂で味わう魚だこれは。
  
刺身が新鮮
鮮度パッチパチのお刺身!
 
あまりに驚いたのでお店の人に聞けば、ここは平戸のアンテナショップ的な飲食店で、一目で魚は毎朝クール便で平戸から直送されるらしい。日本の物流技術はここまで進化しているのか…。そして銀座で、このレベルの魚が1500円で食べられるのか…。
マダイ、ブリ、ブダイ。青魚と白身を交互に、ホイホイ口に運ぶ。キッコーマン社には申し訳ないが、醤油はキッコータとキッコーイワしか使わなかった。濃厚で甘味のある刺身醤油は、その名のとおり「刺身」という食材にふさわしい。そして同じ地で生まれた食材同士の相性は、言うまでもなく抜群に良い。
またお気に入りのお店が一軒増えた。
 
キッコーマン「しぼりたて生しょうゆ」は、嘘偽りなく我が家で使い続けている定番です。日々の食生活を彩る、とても美味しいお醤油よ。
 

 

純喫茶ローヤル

極楽の昼食を終えて、同じフロアの純喫茶ローヤルに移動する。休日に欲しいのが「読書の時間」だ。ちょっとの時間でも良いから静かなところでゆっくり本が読みたい。美味しい飲み物が傍らに用意されたら言うことはない。本日それを叶えてくれる空間が、ここ。
  
ローヤルは場所柄からか若い人をあまり見かけない。今日もお昼休み中の会社員、静かに談笑する数名のシニア男性たち、そして私と同じように1人で読み物にふける人たちが席を埋めている。あまり混雑しないのは、もしかしたら純喫茶にめずらしい禁煙のお店だからかもしれない(スモーキングスペースはあります)。
  
純喫茶ローヤルの抹茶オーレ
純喫茶ローヤル「抹茶オーレ」
  
本日のお供は抹茶オーレ。喫茶店で必ず候補に上がるのがクリームソーダだけど、少し長居したいときはミルク系飲み物が良い。ローヤルの抹茶オーレはとてもミルキーで最初は濃厚、途中から氷が溶けてだんだんサッパリした飲み物に変わっていくのが好き。アイスクリームが溶けても違和感がないし、ローヤルのアイスクリームは乳脂肪分が高く美味しいので、別の味わいが生まれるところも好き。
  
ダンディーなシニアスタッフ
ダンディーなシニアスタッフが活躍中
 
ホールスタッフもシニアの方が多くゆったりとした接客で、全体的にセカセカしない余裕を感じる。そんな空間で過ごす、贅沢な1時間半。最後にお冷やを飲み干すと、ほんのりレモンの味がした。

ビックカメラ有楽町でポイ活

エネルギーチャージ時間を終えて、移動を開始する。地上は絵に描いたような真夏日だが、地下鉄の駅同士や商業施設をつなげる地下道はエアコンが効いているところもあってずいぶん涼しい。真夏の昼間にウォーキング(?)できるのは大都会ならではだろう。
とはいえ、猛暑の日はやはり極力外出をしないに限るのだが。
 
東京交通会館から2分ほどで到着したのは有楽町ビックカメラだ。これも東京に来る時にほぼ必ず行う、大切な寄り道となっている。
私はクレジットカードを3枚利用しているが、そのうちの1枚「ビックカメラSuicaカード」を仕事用に割り当てている。仕事は自宅でのテレワークのため、業務に必要な環境は自分で用意する必要があり、インターネット代、デザインソフト代、電気代などなど、毎月の必要経費はそれなりにかかる。そのランニングコストの支払いで勝手に貯まっていくポイントを使い、私生活で必要なものをタダで揃えるのが楽しみの1つなのだ。
 
ビックカメラSuicaカードを選んだのは「本当に必要な物」を手にいれる選択肢が広いから
以前は還元率の高い別の大型量販店のクレジットカードを使っていた。電化製品もパソコン周辺の物もドラッグ系も何でもそろっているから効率よく使えるだろうと想定していたのだが、時代が変わりインターネットでの買い物が普通になると事情が変わってしまった。店で見かけたものをすぐには買わなくなったのである。検索して底値を確認する習慣がついてしまうと、いつもその量販店でポイント消化するのが必ずしも得とは言えず、結果あまり使わないというスパイラルに陥ってしまった。
  
ビックカメラカードの説明
「本当に必要なもの」が手に入れやすい
ビックカメラSuicaカード

 
その点、ビックカメラSuicaカードは「大型量販店ビックカメラ」系列店だけでなく「JRが運営する駅ナカ商業施設」での買い物、さらに「Suicaへの現金チャージ」にポイント利用が可能である。日用品はビックカメラ、洋服や食品、贈答品などはJR商業施設、それでも消費できなかったものはSuicaにチャージして交通費や普段の買い物の支払いに使えるので、取りこぼしが無い理想のカードと言える。マジで大好き。
 

 
ポイントで本日もらったのは電動歯ブラシの交換部分とシールラベル式プリント用紙。「本当に必要な物」をタダで手に入れるのは心の満足度を高めてくれるのでオススメ。

新宿世界堂

ビックカメラでの買い物後は地下鉄を乗り継いで新宿3丁目に移動し、新宿世界堂本店に立ち寄った。玄関に飾る絵を描く道具や画材を買うためだ。房総での暮らしが始まったら、休日はアート活動を楽しみたいと長く考えていた。1年目はまだ家に手を入れる必要があったり、一時的に仕事を増やしたりでなかなか時間が取れなかったけれど、そろそろ始めて良い気がする。
  
生きていたら「こうしたい」「ああしたい」に終わりはない。一方で、時間が過ぎ去っていくのは信じられないくらい早い。心の内にあるたくさんの「こうしたい」「ああしたい」は、何もしなければ本当にこのまま終わってしまうのかも。そんなことを真剣に考えるようになったのもアラフィフという年齢のせいだろうか。
自分の母親のように70歳過ぎても毎日畑仕事をし、遠方の娘のところへ旅行に行けるほど元気なお年寄りになれたら良いけれど、残念ながらそうならない人生だってたくさんあるし、私にだってその可能性はある。
  
「どんな立場であっても、やる人は何でもさっさとやっちゃうんだろ。自分の腕みがいてさ。」
  
「きょうの猫村さん」で、家政婦紹介所の奥さんがそんなようなことを言ってたっけ。思い続けるだけでは焦りがつのるけど、そんな時の特効薬は「行動」で、それ1つで心がずいぶん楽になる。
自分の気持ちを蔑ろにしすぎるのは、きっと良くない。
 

 

時刻は17時過ぎ。画材袋を下げ、新宿駅バスターミナルで帰りの高速バスの切符を買った。久しぶりの東京、とても楽しかったな。
1時間後には自然豊かな、私の大好きな場所だ。

情報のまとめ

今回立ち寄った場所の情報です。

京橋郵便局きょうばしゆうびんきょく
住所
東京都中央区築地4丁目2−2
京橋郵便局
京橋郵便局
おすすめポイント
「東京中央」局名の初日特印押印は、大抵ここで行われます。絵柄入り特印(手押し、押印機)はもちろん、黒活(和文、機械、欧文)など多くの消印が取り扱われます。


【島の味処】平戸こんねしまのあじどころ ひらどこんね
住所
東京都千代田区有楽町2丁目10−1 東京交通会館 地下1階(51 区画
HP、SNS
>東京交通会館HP
【島の味処】平戸こんね
【島の味処】平戸こんね
おすすめポイント
長崎県平戸のアンテナショップ的な飲食店。毎朝クール便で平戸から直送される魚は驚くような鮮度!それをリーズナブルな料金で食べられます。


純喫茶ローヤルじゅんきっさ ろーやる
住所
東京都千代田区有楽町2丁目10−1 東京交通会館 B1F
HP、SNS
>東京交通会館HP
純喫茶ローヤル
純喫茶ローヤル
おすすめポイント
1965年開業。オープン当時から変わらないスタイルで営業する老舗純喫茶です。細かな点まで凝った装飾に漂う気品。時が止まったような空間で、ゆったりしたひとときを。

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