房総エッセイ

富津市 小泉酒造で一人晩酌酒を選ぶ

酒造りは米作りから全国新酒鑑評会金賞受賞「東魁盛」小泉酒造 おでかけ

つまんでちょんまげ

先週こんな山口県土産をもらった。
 
房総アジフライ美味しそう
つまんでちょんまげ…
「◯◯してちょんまげ」というフレーズを耳にしたのは果たして何年ぶりか。まだ私が「少女」と名乗ることを許されていたころ、テレビでは「8時だョ!全員集合」や「ひょうきん族」などのお笑い番組がお茶の間を賑わせていた。確かそのころだったような?と調べてみれば、どうやら片岡鶴太郎さんや加藤茶さんが使われていたようだが、誰が発祥かまではハッキリしない。
あながち時期は外れていないようで、最近記憶力があやしく落ち込みがちなアラフィフは、嬉しくて一人ニヤニヤした。
 
パッケージには小さく「日本酒のくに いわくに」とある。検索すると名酒の宝庫、山口県岩国市で作られているおつまみシリーズらしい。見つけたCMには勢いがあって面白い。

日本酒に詳しくなくても「獺祭」(旭酒造)をご存知の方は多いだろう。岩国市を代表する大変美味しいお酒で、人気アニメでそのビジュアルが登場したことなどから複合的に火が付き、今や世界にまで認知度を高めている。その他にも「雁木」(八百新酒造)、「五橋」(酒井酒造)、「金冠黒松」(村重酒造)など、岩国には力ある日本酒がたくさん存在する。
それらと一緒にに楽しんでもらおうと、やはり地元岩国の食材や名産品を使ったお土産ブランドとして誕生したのが「つまんでちょんまげ」なのだそうだ。HPを見ると甘い系からしょっぱい系、おかず系からお菓子系と、ジャンル毎に結構な商品ラインナップである。
 
目の前にあるこれは「高森牛と岩国れんこんのしぐれ煮」という商品らしい。
高森牛は岩国のおだやかな自然のなかで大切に育てられている牛で、岩国れんこんは栽培が始まって200年以上の歴史をもつ超ロングセラー名産品。それらを岩国市のハチミツ店「ビ庵」のクッキング用蜂蜜と生姜で味付けし、じっくり煮込んだもの、とある。産地の徹底ぶりが完璧だ。
 
「同じ気候・風土の中で作られた食品同士は相性が良い」というのは万国共通認識である。このおつまみ、岩国のお酒と合わせればさぞかし美味しいのだろうよ。しかし今、手元にそれはない。
突然、普段は考えもしないことが頭に浮かんだ。
 
「房総の日本酒、買いに行くか!」
日本酒買いにいくか

房総だって名酒揃い

実は下戸だ。正確には「お酒の味は好きだが、アルコール分解力が弱い体」で、すぐに酔うため量が飲めない。以上から自宅での晩酌習慣がなく、特に房総暮らしが始まってからは運転しないと街にも出られなくなったため、外食時も飲まなくなった。こうして日々の生活から、お酒の楽しみは消えてしまったのである。
一方でここでの生活を始めて間もなく、房総には酒蔵が多いこと、逸品と称される地酒が数多く存在することを知った。全国新酒鑑評会やモンドセレクションで「最高金賞」を受賞した商品がいくつもあり、製造する酒造会社はもちろんのこと、各市町村もPRには力を入れている。例えば「生きた水の里」と呼ばれる君津市久留里地区。名水百選に選ばれるこの地には酒蔵が8つも存在し、そのお酒を飲み比べできる施設「生きた水久留里 酒ミュージアム」はJR久留里駅前の地域交流センター敷地内にある。
  
余談になるが、JR久留里駅前は美味しい飲食店や素敵なカフェがたくさんある美食の地。電車で行けるので、グルメ好きな方の「ぶらり途中下車旅行(お酒も飲める!)」に大変おすすめです。
  
相性の良い料理とお酒が生み出す極上の幸せ、もう長いこと味わっていない。岩国のおつまみと房総の銘酒マリアージュを試してみよう。銘酒揃いの地に住んでいるのに、それを楽しまないのは絶対にもったいない。今日は房総お酒デビューの日!
何事においても、きっかけは些細なことだったりするものだちょんまげ。

富津市の酒蔵「小泉酒造」

友人夫婦おすすめの「東魁盛」

記念すべき第一回 房総ひとり酒会。どのお酒にするのかという話だが、意外にそこはあっさり決まるのだった。富津市にある「小泉酒造」。ここは郵趣友達のはるっちさんが、毎年欠かさずご夫婦で足を運ばれている場所だ。
  
はるっちさんのお住まいは東京湾の向こう、三浦半島のさらに西側の街である。新酒が出ると遠土はるばる、房総まで酒購入ドライブを楽しむのが夫婦恒例の行事らしい。ご主人の1番のお気に入りが「大吟醸 東魁盛(とうかいざかり)」で、杉玉が吊るされると知るや、いつ海を渡るかの日程調整に入るそうだ。まるで渡り鳥である。
 
お酒が呼んでいるわー!
  
東魁盛の受賞歴は実に華々しい。全国新酒鑑評会では14年連続入賞、そのうち12回は金賞(最高賞)を受賞している。商品説明には「封を開けるとメロンのような芳香が広がる、本当に美味しい当蔵最高のお酒」とある。大吟醸ならではのフルーティで飲みやすく、舌の隅々までジュワ〜っと味わいが広がるようなお酒なんだろうな。ああ、想像するだけで酔っぱらいそう。
近しい人間のクチコミには素直に乗るもの。目指せ東魁盛!

物販店舗「酒匠の館」

真夏のピーカン日曜日。のどかな田舎道を進んでいくと、風にはためくのぼり旗が見えた。紫地に白文字で「東魁盛」とある。間違いない、ここが今日の目的地だ。
 
千葉県富津市小泉酒造 酒匠の館
  
小泉酒造の直売店「酒匠の館」。高天井の店内は広々と開放的で、小泉酒造のお酒はもちろん、房総のお土産品もたくさん並べられている。きき酒コーナーがあり、実際に味わってお好みを探せるところも魅力的だ。氷でキンキンに冷やされたお酒たち、今日の暑さで熱った喉にキューっと流し込めばさぞかし旨いのであろうよ。まさにドライバー泣かせの一角。
 
千葉県富津市小泉酒造 酒匠の館
千葉県富津市小泉酒造 酒匠の館
千葉県富津市小泉酒造 酒匠の館
  

喫茶「ソムリエ庵」

千葉県富津市小泉酒造 喫茶ソムリエ庵
千葉県富津市小泉酒造 喫茶ソムリエ庵
  
試飲コーナーと反対側の奥には喫茶スペースが設けられている。ソフトクリームのライトディスプレイに「氷」の吊り下げ旗と、夏スイーツの誘惑がすごい。欲望のままフラフラとその領域へ立ち入ったとき、突然はるっちさんが脳内に降臨した。
 
大吟醸ソフトクリームは絶対食べちゃうのよね
  
酒蔵のソフトクリーム、絶対美味しいやつ…! 外は灼熱の暑さだし、最高に美味しく味わえるシチュエーションがばっちりそろっているのに、悲しいかな私はドライバーである。お酒が入っているものは、今は食べるわけにいかない。
はるっちさんはいつもご主人が運転されるからなあ、いいなあ。ソフトクリームだからお持ち帰りもできないし、食べるときは誰かに連れてきてもらうしかない。
スイーツコーナーは泣く泣く、今回はスルー。

酒蔵と資料館

店の裏側につながる出口から外に出ると、目の前には酒蔵の建物があった。窓越しに中の様子をうかがうと、今は整理期間中とのことで木箱やタンクが積み上がっている。気温が下がり酒造りシーズンになれば、杜氏さんたちの仕事の様子が見られるのだろう。
 
千葉県富津市小泉酒造  酒蔵見学
  
そのまま建物外を移動して駐車場側にまわると、今度は別棟の資料館がある。
 
千葉県富津市小泉酒造  資料館外観
  
中に展示されているのは江戸時代以降に使われてきた酒造用品や生活用品だ。小泉酒造の歴史は200年以上。ここに並んでいるのは人々と共に銘酒を生み出し、世の中に広めることに尽力した道具の数々ということになる。人でも物でも、なにか1つ極めたものがある存在は、誇らしげに見えるもの。付喪神(つくもがみ)も宿っていそう。
 
千葉県富津市小泉酒造  資料館外観

実食!房総の銘酒と岩国のおつまみ

夏の純米吟醸「東魁」

かなりのんびり過ごしたあと、購入して帰ったお酒がこちら。
 
千葉県富津市小泉酒造 夏の純米吟醸「東魁」
夏の純米吟醸「東魁」
まさかの東魁盛ではないという展開。なんとなくだけど食べ物に旬があるように、お酒にも季節ごとに最適な時期があるんじゃないかと思ったの!東魁盛は新酒できたての時期が最も美味しいのだとすれば、はるっち夫妻が房総に来られるころに私も買おうと思ったの!
この商品には「夏純吟」というラベルが貼られているし、大輪のひまわりの絵も実に夏らしくてそそられる。冷やで飲むとすごく美味しそうな気がして、今回選ばせていただきました(言い訳じゃないっ!)。
  
いざ実食。房総の銘酒と岩国のつまみ、果たしてその相性は?
 
千葉県富津市小泉酒造 夏の純米吟醸「東魁」と山口県岩国のおつまみ「高森牛と岩国れんこんのしぐれ煮」
千葉県房総の日本酒と、山口県岩国市のおつまみ
「なんで米まであるんだ」と言われそうだが、日本酒に合うものは絶対に米にも合う。味わってみたいに決まってる。
まずはしぐれ煮の岩国レンコンから。薄くスライスされているけど、しっかりシャッキリ食感。濃いめの味付けで、生姜がよく効いている。ここに冷えた東魁をグイッと。
  
「おー!良いじゃん、合う合う!」
  
相性はバツグンだ。「つまんでちょんまげ」の甘辛くしっかりした味付け。それに引けを取らず「東魁」もしっかり主張してくるお酒で、辛口ではないけどすっごくジューシー。両者の旨みが口の中でぶつかり、フワ〜ンと広がってゆくところが最高だ。危ない危ない。下戸が味わう久しぶりのお酒、飲みすぎると大惨事を起こしてしまう。このおちょこ一杯をゆっくりと、そしてしっかりと楽しもう。
 
山口県岩国市のおつまみ「高森牛と岩国れんこんのしぐれ煮」
トロットロに煮込まれた高森牛
そうするとしぐれ煮が余るので、ここで米の出番となる。トロトロに煮込まれた高森牛をご飯に乗せて、一緒にパクリ。やっぱり美味しい!お酒のつまみとして作られた商品だけど、ご飯のおかずとしても実に優秀。しぐれ煮を中心に酒とお米を交互に口に運ぶ、そんな夕食。

東魁盛酒饅頭

夕食にしては少ない量だったのには理由がある。今日は少し重めのデザートがあるからだ。
 
千葉県富津市花月堂の東魁盛酒饅頭
東魁盛が使われた贅沢な酒饅頭
これは土日限定販売の「東魁盛酒饅頭」。お会計のときレジの女性が勧めてくださった。
「近所の花月堂、和菓子屋さんなんですけどね、そこで作っていただいているんです。生地にうちの大吟醸酒と酒粕が入ってまして。美味しいですよ〜」
 
千葉県富津市花月堂の東魁盛酒饅頭
「酒まん」の焼きゴテ印に味わいがある
包みをひらくとすぐに上質な吟醸香が広がった。ひとしきりそれを堪能してから、大きく口を開けてパクリ。2、3回の咀嚼。
その味が脳に伝わったとき、驚きのあまり「えっ?!ウソ、えっ?!!」と軽くエラーが起こった。
本当に美味しいのだ。皮に使われているお酒が最上級のものだから、風味というものが群を抜いている。そしてもっと驚いたのが、餡。餡が!こし餡が!もんのすごく美味しい(もんのすごく、の上にスタッカートをつけたい)。舌の上を流れるような、幸せな余韻を残してサラーっと溶けていくような、これは本当に餡か?と、酔いも手伝ってどんどんバグる。
女性の店員さん、貴女の笑顔に嘘偽りなし。勧めてくださって本当にありがとう。小泉酒造に行くなら土日が狙い目。このお饅頭、また絶対に買いたいもの。
 
そして「花月堂」さん。そなたの名前を覚えたぞ。いったい、どんな和菓子屋さんなんだ…。
後日乞うご期待(私が)。

情報のまとめ

今回立ち寄った場所の情報です。

小泉酒造こいずみしゅぞう
住所
〒299-1753 千葉県富津市上後423−1
HP
https://www.sommelier.co.jp/
千葉県富津市小泉酒造 酒匠の館外観
千葉県富津市小泉酒造商品ディスプレイ
おすすめポイント
寛政5年(1793年)創業。「酒造りは米作りから」をモットーに自社の田んぼで酒造好適米「五百万石」を栽培。銘酒「東魁盛」は過去12回も金賞を受賞されています。土日限定販売の「東魁盛酒饅頭」は試してみる価値ぜったいアリ!
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