住宅地にひっそりと佇む店舗
知らない住宅地を車で走る時は神経を使う。角から人が出てこないか、左右から車が来ないか。登り下りの細い坂道が続き、信号のない交差点も多く、相当のノロノロ運転となった。
そろそろ着くのでは?と思われる場所に来ると、さらに道は細くなっていく。そんな住宅地の小道沿いに、目的地の「ラーメン日吉」はある。
「ラーメンといえば豚骨」という地域に生まれ育った。豚骨ラーメンほど美味しいものは無いと思っていたから、若いころは醤油ラーメンの美味しさが理解できなかった。
「あんなにあっさりしたラーメンは美味しいのか?」と。
さらに上をいく塩ラーメンに至っては、「あれはラーメンなのか?」と。

年齢を重ねると悲しいかな、内臓の消化機能が落ちる…
ところが年齢がいくと、内臓が豚骨スープを受け止められなくなる。とにかくもたれる。数日ひきずる。今では醤油&塩ラーメンのほうが美味しいと感じてしまう。
それでも懐かしい味に時折回帰してみたくなるもので、久しぶりに食べてみたいと思ったのだ。食べ切れるかどうかは分からないけれど。
あまり運転は上手くない。特に苦手なのが切り返して入れる「バック駐車」だ。前述のとおり店の周囲は車一台分の道幅で、そんな中での駐車は、隣の車やお店の一部にぶつけやしないかヒヤヒヤした。

無事駐車を完了してお店の前に立つ。暖簾の色とデザインが良い。過度に主張しない感じがとても好きだ。
実はこのお店、営業時間がとても短い。お昼しか営業しておらず、しかも11:30-14:00という2時間半だけの激短営業。到着したときはすでに13時をまわっており、「まだ食べられるかな…(スープ残ってる?)」と不安になりながら、引き戸を引いた。
驚きの価格!激安ラーメン
「いらっしゃいませー」と、落ち着いた女性の声。少し遅れて奥からも、今度は男性の声。それでなんとなく、ここは年配のご夫婦で営まれているお店かなと察しがついた。
6人グループ客と、1人の男性客。店内は静かな街食堂特有の、のんびりした雰囲気が漂っている。
入ってすぐに気づいたのが、おでんの存在だった。入口から一番近い厨房におでん鍋があり、出汁の良い香りが食欲を刺激する。
いいね…!こんな寒い時期に見かけたら、絶対に抗えないものの一つだ。
そうは言えど、ここはラーメン店。先にメインを注文すべきだ。席につき、壁のメニュー表を見て「ん?」と首を傾げる。

(最近、老眼酷いからな…)
少し近づいて、もう一度よく見る。

間違いない!やっぱりラーメン一杯400円だわ!
この値段設定は、私の幼少期のものだ。連れて行ってもらった中華屋さんで「へー、ラーメンって400円で食べられるんだ。それなら私の貯金箱にもあるかも」と、嬉しい気持ちになった思い出が残っている。
時間は40年以上進んでいるし、加えて長く続いたデフレ期間は終わり、今はなんでもかんでも物価高の時代。なんなんだ、このお店の中だけ昭和で止まっているのか?
このお値段なら、いつもは手を出さない領域にも踏み込める。
「チャーシューメンください!!!」
おでん&ラーメン実食
ホカホカおでん
メインの注文が完了したので、おでん鍋に近付く。壁に貼られた手書きの値段表には「牛すじ120円、餃子100円、その他90円 大根は取り扱いなし」と。分かりやすく潔い。そして値段設定がやっぱり…。
「どれか取りましょうか?」
女将さんがにこやかに声をかけてくださった。この日選んだのは、糸こんにゃくと餅きんちゃく。大本命の牛すじは残念ながら売り切れ。閉店直前の時間帯だもの、仕方がない。どうしても食べたいなら開店直後くらいで来ないと。

日吉のおでん、糸こんにゃくと餅きんちゃく
ふわぁと鼻腔をくすぐる出汁の香り。長く出汁につかっていた具材は、味がしっかり染みこんだ色をしている。お皿にヘラでつけられた辛子のビジュアルも良いな。
まずは餅きんちゃく。箸でそっと油あげを割ると、中から現れる白いお餅…だけではなかった。キャベツが一緒に包まれている。
餅をキャベツで巻き、それを油あげの中へ。これはオリジナルなのかな?だとしたらすごい発明!
とろりと伸びる餅に、くたっと柔らかくなったキャベツのコンビ。甘みを増したキャベツと餅の相性が、意外なほど良い。
油あげのコク、出汁の旨み、野菜の甘さ。まさに三位一体の美味しさ!

餅きんちゃくの中は餅+キャベツ
続いて糸こんにゃく。一口目、前歯でしっかり押さえながら出汁をすすってみる。うーん、美味しい!そのまま食べ進めて、口の奥でじゅわーっと広がる旨み。本来淡白なのに、味付けによってこんなに美味しくなるのだから。
無限の可能性を秘めた食材、糸こん。
チャーシューメン
「お待たせしましたァ〜」
ご主人がチャーシューメンを持ってきてくださった。

日吉のチャーシューメン
具材はチャーシュー、のり、きくらげ、もやしにネギ。具材は全体的にどれも少なめだけど、ここに文句を言うのは間違っている。令和の時代に、チャーシュー5枚入って一杯580円ですよ?お店の努力を賞賛し、感謝していただくのが正しい。
ラーメンを食べる時は、最初にスープを一口飲むのが定番。あら!豚骨スープがとてもあっさりしてる。旨みはあるけど、私が知っている豚骨スープとは全く別物。アラフィフの胃腸も、これなら問題なく完食できる。
他の博多豚骨ラーメン店ではよく「麺の茹で具合リクエスト」を受け付けている。麺が細いストレート麺なので「バリカタ」「ハリガネ」など硬めを希望する人が多いが、日吉のラーメンは「ヤワ/ズンダレ」にあたる柔らかさだ。決してのびているわけではないが、スープと一体化し、噛むと飲むを同時進行できるような、とても穏やかなラーメン。
来店前の心配は杞憂に終わり、気付けばスープまですっかり完食してしまっていた。

車に戻り「そういえば」と、Google MAPを開いてみる。記憶は正しかった。お店の近くには老人ホームがあるのだ。時々外出して、ラーメンを楽しみにこられるシニアの方もいらっしゃるのではないかな。真実は分からないけど、もしそれがあのラーメンの作り方や値段設定、すべてに関係しているのだとしたら?
お腹だけでなく気持ちまでほっこりとした暖かさに包まれ、家路についた。
情報のまとめ
- 住所
- 〒299-1172 千葉県君津市三直1333
- インスタグラム
- https://www.instagram.com/_hiyoshiramnyaehara?igsh=Z2xuMHNlczB6Y2cx&utm_source=qr
- おすすめポイント
- 豚骨なのにスープはあっさり、麺は柔らかく、胃腸が弱い方やシニアの方も、最後まで美味しくいただけるラーメンです。一杯400円という驚きのお値段!おでんも美味しいです。
